堤かなめのこれまでの質問
「211回通常国会」(2023年1月23日~6月21日)
「212回臨時国会」(2023年10月20日~12月13日)
第211回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 令和5年5月10日
○堤委員
立憲民主党の堤かなめでございます。
DV法の改正につきましては、参議院において、衆議院に先立って議論が行われました。また、本委員会でのこれまでの質疑もございましたが、外国籍のDV被害者への支援については議論がございませんでしたので、この点に絞って質問させていただきたいと思います。
一点目に、DV被害者への安定した在留資格の保証についてです。
外国籍の方々へのDVの防止と被害者保護のため、被害者の安定した在留資格が必要であることは、人種差別撤廃条約委員会や女性差別撤廃条約委員会などから繰り返し勧告が出されてきました。しかしながら、DVから逃れるために配偶者と別居や離婚した外国籍の被害者の場合、日本で定住する道筋が非常に狭いというのが現状です。
例えば、日本人の夫や妻との間の日本国籍の子供や、日本で育ち、母国語を使えず、今後も日本で暮らしたいと願っている子供を残して被害者が母国に帰ってしまえば、もう二度と、一生この子に会えないということになる、そういった事情から、何としても日本にとどまりたいという思いを強く持たれる方もおられます。
また、母国には既に家族がいない、働くところもないなど、母国に帰国できないなどの事情を抱えた外国籍の方は、たとえDVを受けていても、その被害を耐え忍ぶしかないという非常に過酷な状況に陥ってしまいがちです。
そこで、このような事態を防ぐため、DV加害者である配偶者から在留手続に関する協力を得られない外国人のDV被害者が在留資格の更新や在留資格の変更手続を行う際にどのような配慮が可能なのか、教えてください。
○丸山政府参考人
お答え申し上げます。
一般的に、在留期間の更新又は在留資格の変更の申請があった場合には、申請人の活動内容等が在留資格に該当することに加え、それまでの在留状況等を総合的に勘案し、在留期間の更新又は在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに許可することとしております。
ただいまお尋ねございましたDV被害者から在留期間更新許可申請等がなされた際に、DV加害者である配偶者から在留手続に関する協力が得られない場合には、個々のDV被害者の状況に十分配慮しつつ審査を行い、柔軟に対応しているところです。具体的には、DV加害者である配偶者から協力を得ることが困難であるとして申請に係る立証資料の一部が提出されない場合には、その他提出された資料により審査を行い、所要の在留資格を付与することとしております。
○堤委員
DVの加害者からの協力が得られない場合、資料の提出などの協力が得られないというときでも、適宜、状況をきちんと勘案して、きちんとした御配慮をいただくということだと思います。
それでは、二点目に、入国管理の際の、在留資格を問わない保護と救済について質問いたします。
スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが、二〇二一年三月六日、名古屋出入国在留管理局の収容施設において三十三歳の若さでお亡くなりになりました。これまでにも、入管の収容施設では、医療放置に起因すると見られる死亡事案が幾度も発生し、そのたびに、内部調査が行われ、医療体制の見直しを始めとする再発防止策がうたわれましたが、またもや悲惨な事案が繰り返されてしまったことは残念でなりません。
また、ウィシュマ・サンダマリさんの場合、同居する同国人パートナーからの暴力を受け、救いを求めて警察に相談に出向いたにもかかわらず、在留資格がない状態だったため、保護ではなく、入管の施設に収容されてしまったとのことです。その後、入管でもDV被害を繰り返し訴えたのですけれども、DV被害者としての保護や支援を受けることはありませんでした。
そこで、このウィシュマ・サンダマリさん事件を踏まえ、在留資格の有無にかかわらず外国人のDV被害者も救済の対象とするよう入管の運用を改善すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○丸山政府参考人
お答え申し上げます。
入管庁におきましては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針を踏まえ、内規であるDV措置要領を定め、在留資格の有無を問わず、日本在住の外国人をその対象としております。
その上で、ただいま委員より御指摘のございました名古屋事案に係る調査報告書におきまして、担当職員がDV措置要領の存在や内容等を認識していなかったことなどを指摘したことを踏まえ、入管庁におきましては、令和四年一月に、DV事案への職員の理解を深め、より一層適切に対応するため、専門家の意見等を取り入れ、DV措置要領の充実化を図る改定を行った上で、毎年実施しておりますDV事案への対応に特化した研修におきまして、DV措置要領について周知徹底しているほか、専門家による講義や実例を基にした事例研究を通じ、DV事案の認知手法等の習得及び職員の意識向上を図っているところです。
入管庁における外国人DV事案の認知件数でございますが、令和二年には百十件であったところ、令和四年につきましては、速報値でございますが二百四十九件に増加しており、これらの取組の効果が表れているものと考えております。
引き続き、在留資格の有無にかかわらず、外国人のDV被害者の立場に十分配慮しながら、個々の事情を勘案しつつ、適切な対応に努めてまいりたいと存じます。
○堤委員
ありがとうございます。是非、引き続き取組の強化をお願いいたしたいと思います。
三点目に、外国籍DV被害者への福祉的支援についてです。
支援現場においては、外国籍の被害者が在留資格を失っている場合、本来であればDV防止法における一時保護などの支援の対象となっているにもかかわらず、その後の自立支援に必要な福祉的支援のめどが立たないことなどを理由に一時保護など公的な支援を断られるケースが多々あると聞いております。
厚生労働省は、在留資格がない方の場合も、緊急に保護を要することが認められれば一時保護の実施が可能である旨通知をしている、さらに、婦人相談所ガイドラインにおいては、自立のめどが立たないことを理由に一時保護をしないという運用は行ってはならないという旨を明記しているとのことです。しかし、現実には、多くの支援窓口において、上記通知やガイドラインに沿った対応がなされていないというのが実態ではないかと思っております。
DV法二十三条、「職務関係者による配慮等」では、「被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。」と明記されています。この条文に、在留資格の有無にかかわらずという文言も入れるべきと考えますが、もしその改正がかなわないとすれば、在留資格の有無にかかわらず被害者として扱われることを更に周知徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○和田副大臣
お答え申し上げます。
配偶者暴力防止法においては、職務関係者は、被害者の国籍を問わずその人権を尊重しなければならないこととされております。先ほどの御指摘のとおりでございます。また、在留資格の有無を問わず、日本在住の外国人の被害者も法が対象とする被害者に含まれております。
委員の御意見もしっかりと受け止めて、法案をお認めいただいた暁には、外国人の被害者の保護等について、運用上更に何が必要か精査の上、基本方針の活用等も含め、必要な対応を図りたいと考えております。
○堤委員
あわせて、在留資格の有無、法的地位にかかわらず全ての被害者に迅速かつ適切な援助、支援サービス、保護が提供されることを確保するため、基本方針や基本計画への明記が必要と考えておりますので、その点について要望しておきたいと思っております。よろしくお願いします。
次に、矯正教育についてお聞きします。
矯正教育とは、非行や犯罪を犯した者を矯正して、直して、社会に復帰させるという教育のことです。この矯正教育の充実は、DVや、DVに含まれる性暴力の予防、加害者にも被害者にも傍観者にもならないための教育という点からも重要と考えております。
資料を御覧ください。タイトルは、「男子少年院における「生命(いのち)の安全教育」について」というものでございます。
この資料の提供をいただいたのは、元福岡少年院長の渡辺玲子氏でございます。この渡辺玲子氏の略歴につきましては、裏のページにありますように、三十六年間という長きにわたって、法務省矯正局所管の矯正施設、いわゆる少年院において矯正教育や社会復帰支援の現場で指導に当たってこられた専門家の方でございます。
まず、この資料提供の趣旨について、最初に、こちらに書いてありますので、読み上げたいと思います。
男子少年院には、強制性交や強制わいせつ、今国会で刑法が改正されれば不同意性交罪、不同意わいせつ罪に変更となるわけでございますが、これらの性犯罪を行って入院した人もいれば、特殊詐欺や窃盗、傷害、大麻等の薬物事案で入院している人もいます。前者は性犯罪を防止するためのプログラムを受けますが、後者については性に関する特別なプログラムが現在用意されているわけではなく、各少年院で工夫した授業が行われたり、少年院の矯正教育全般の中で各自よりよい生き方を学び取っていくような仕組みになっています。
しかし、そういった人の中にも、女性に対し暴力的支配を行ったり、女性を商品のように扱う業務に従事してきたりした人はいます。人と、支配、被支配ではない関係を築くことについて、教育を受ける機会を逸してきた人も少なくありません。
そんな中、在院者を対象に以下のような授業を実施し、意義があったので紹介します。
現在、福岡県では、性暴力対策アドバイザー派遣事業として、小中高校に講師を派遣し、出張授業が展開されています。本年度からは全ての公立の小中高校が対象です。学校での授業を受ける機会を逸しがちな少年院在院者に、同様の授業を必須で行うことは意義があると考えます。
また、少年院の法務教官が少年にとって日常の生活レベルで様々な価値規範のモデルとなっていることを考えると、受講する少年だけでなく大人も共に受講し考える機会となることは、一層意義があると思います。
ということで、実施の概要が一番から九番まで書かれておりますが、これはちょっと、時間の関係上、読み上げません、省略させていただきます。
また、十の在院者の感想、そのような授業、生命の安全教育を受けた感想について読み上げさせていただきたいと思います。
他人の気持ちだけでなくて自分の気持ちも大事にしていいんだと思った。
同意について、確認し合える関係をつくることが大事と言われ、そのときはよく分からなかったが、今考えると、確認し合っても雰囲気や関係性が悪くならないような関係をつくることが大事という意味だったんじゃないかと思う。そういった関係を築くことができないことも自分の非行の原因につながっているのかと思った。
自分と相手の境界線って大切だと思った。振り返ってみると、自分がされて嫌だったことを人にしたこともあって、それは相手の境界線に勝手に入ってしまっていたのだと思う。また、男は自分の問題は自分で解決すべき、怖いと思っても強く振る舞うべきといった思いがある。変なプライドを捨てて自分に素直になることも大切だと気づいた。
パートナーとの性的同意を紅茶に例えた話が物すごく分かりやすく、印象に残った。境界線の話では、過去の出来事を思い出していろいろ考えさせられた。
セックスについて真面目に考えたのは初めてだった。相手の嫌を受け入れることは相手を大切にしているという話もあって、そういった考え方を大切にしていこうと思った。
境界線は、目に見えなく、人それぞれ。今まで私は、分からないから、こうなんだろうと自分の思いを押しつけていた。そのせいで人を悲しませてきたのに、それにも気づかず、何か悪いことしたっけと思っていた。自分と人はそれぞれ考え方が違うということをしっかり考えないといけないと思った。
といった感想が寄せられているということでございます。
長々と紹介させていただきましたけれども、これについて、このような少年院の取組、生命の安全教育について、どのような感想を持たれ、どのような評価をされるのか、お聞きしたいと思います。
○門山副大臣
少年院においては、在院者の非行名が性非行に該当する者などに対しては、性非行防止指導として体系的なプログラムを実施し、自己の性非行に関する認識を深め、性非行をせずに社会で適応的な生活を送る方法を身につけさせる指導を行っているほか、非行名が性非行以外の在院者につきましても、社会での生活状況など、在院者の実情を踏まえ、各少年院ごとに性に関する指導を行っているところでございます。
委員御指摘のとおり、少年院在院者には、性や性暴力に関する知識や認識が乏しい者が少なくないものと承知しており、福岡少年院のような、関係機関と連携した取組について、各少年院が実施し、在院者に性に対する正しい知識を身につけさせることは、出院後、健全な社会生活を送るために重要であると認識しております。
○堤委員
このような教育が重要であると認識いただいているということで、大変心強く思います。
そこで、全国の少年院に在院する少年たち全員が矯正教育の中で生命の安全教育を受講できるようになれば、少年たちの社会復帰に資するのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○小山政府参考人
お答えいたします。
少年院におきましては、少年院に送致されることとなりました事件の本件非行を惹起した者のうち、性非行の原因となる認知の偏り又は自己統制力の不足が認められる者に対します性非行防止指導というもの、それから、本件非行が性非行以外の在院者に対しましても、その必要性や特性等、在院者の実情に応じまして、集団又は個別によって実施をする性に関する指導を実施するなど、在院者の性や性暴力に関する知識や認識に関する指導に取り組んでいるところでございます。
ただいま御指摘のありました、文部科学省それから内閣府が連携して作成されました生命の安全教育につきましては、性に対する誤った認識や行動、性暴力が及ぼす影響などに関しまして在院者の理解を促進する上で有効な教材であると考えられますことから、法務省といたしましては、関係省庁と連携し、各少年院において活用が図られますよう、今後、生命の安全指導につきまして各少年院に周知してまいりたいと思っております。
○堤委員
各少年院に周知を図っていただけるというお答えでございました。
先ほどお答えにもありましたが、文部科学省は、内閣府と共同で生命の安全教育の教材や手引を作成し、その周知や展開を図っていると聞いております。
矯正教育の更なる充実のため、省庁の垣根を越えて、法務省とも連携し、生命の安全教育を広めていただければと思います。文科省にお聞きします。いかがでしょうか。
○里見政府参考人
お答えいたします。
文部科学省では、子供たちを性犯罪、性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための生命の安全教育を全国の学校で推進しているところであり、幼児期、小学校、中学校、高等学校など発達段階に応じた授業用のスライド教材や動画教材、児童生徒から相談を受けた際の対応のポイントや指導上の配慮事項等をまとめた指導の手引、さらには各段階の指導内容等に関する教員研修動画等を作成しております。
これらはホームページ上で公開をしており、少年院等矯正教育の場においても実情に応じて活用いただくことが可能となっております。
今後も、法務省の求めに応じまして、生命の安全教育の最新の取組を情報共有してまいります。
○堤委員
ありがとうございます。連携していただけると期待しております。
少し、本筋ではないんですけれども、矯正という言葉自体、今の時代に合っているのかという疑問もございます。矯正教育の内容とともに、例えば社会復帰支援教育などへの名称の変更も御検討いただけたらと思っております。
また、少し時間がありますので、最後に内閣府に一点要望させていただきたいと思います。
薬物を使った性犯罪対策についてでございます。
最近、報道がございまして、性犯罪の被害を裏づけるため、尿に含まれる睡眠薬などの薬物成分について数分で検査できるキットを警視庁が全国で初めて開発したとのことです。警視庁捜査一課が民間企業と協力して開発したこの検査キットは、先月から本格的に導入されまして、島嶼部を除く都内の全警察署に配られるというふうに聞いております。
性犯罪、性暴力の根絶に向けまして、全国の都道府県警においても警視庁と同様に検査キットの活用がされるように、内閣府からも働きかけをお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それから、これも要望でございます。
福岡少年院で実施されました生命の安全教育は、元々、二〇一九年、四年前に福岡県議会で議員提案条例として成立いたしました「福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民等を守るための条例」、いわゆる性暴力根絶条例に基づいて実施されたものでございます。そして、福岡県内では小学校、中学校、高校、全ての学校でこれが実施されておりまして、非常に多くの人たちが受講し、そして、先生たちからも、また生徒からも非常に好評といいますか、本当にこういったものが大事だと。
そして、この国会では、先ほども申し上げましたように刑法の改正がなされると思っております。その中で、同意ということが非常に大切というふうなことも議論されております。刑法が変わったということを周知するということ、そして、同意が大切だということを、本当にたくさんの、知らずに被害者になったり加害者になったり傍観者になったりするということがないように、この生命の安全教育、事件が起こってしまったら、被害者も加害者もその後の人生が大変なことになりますので、この予防教育というものを本当に省庁連携いたしまして広めていただきたい、そのことが一番大切なのではないかというふうに思っているところでございます。
このことをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。
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