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堤かなめのこれまでの質問

第208回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 令和4年4月22日

○堤委員
 立憲民主党の堤かなめでございます。
 まず、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻で、犠牲になる子供が増え続けています。学校などの教育施設も数多く爆撃や砲撃による被害を受けております。民間人の殺害、性暴力、略奪は国際法違反の戦争犯罪であり、断じて許すことはできません。犠牲となられた方々に、心より哀悼の意をささげます。
 そして、子供たちの権利が包括的に保障され、平和と民主主義を守る主体として社会に参画でき、人類の未来を担う子供たちにとって真に必要な政策が確実に実施される体制の構築に向け、以下、質問させていただきます。
 政府の法案では、「この法律において「こども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。」と定義されています。一方、我が党が三月一日に提出した子ども総合基本法案では、子供施策の性質上、「子どものほか若者を対象とすることが適当である場合にあっては、若者に関する施策を含む」と、若者という言葉を明確に示しています。
 そこで、まず野田大臣に確認の意味でお聞きします。中谷議員からも質問がありましたけれども、政府のこども家庭庁設置法案において対象となる「こども」とは、若者、若年層も含まれると考えてよろしいでしょうか。

○谷内政府参考人
 委員にお答えいたします。
 昨年末閣議決定いたしました基本方針の中で平仮名で書いている「こども」とは、基本的に十八歳までの者を念頭に置いておりますけれども、子供が大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程は、その置かれた環境にも大きく依存し、子供によって様々であり、かつ、乳幼児期からの連続性を持つものでございます。円滑な社会生活を送ることができるようになる時期も個人差があります。
 このため、今回政府が提出いたします法案におきまして、「こども」を「心身の発達の過程にある者」と定義しています。これは、大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者をいいまして、議員がおっしゃるような若者や若年層も含まれるというものでございます。

○堤委員
 つまり、特定の年齢で区切るわけではない、十八歳未満に限定されない、必要があれば十八歳、十九歳も含むということが先ほどの答弁でも確認できました。
 本年四月一日より十八歳から成人とされたわけですけれども、その数年前から、先ほど山井議員からもありましたように、十八歳、十九歳が消費者被害に更に遭いやすくなるという懸念が指摘されました。中でも危惧されていたのがAV出演契約の問題です。
 被害者を支援する市民団体の方々は、以前からこの問題の対策を政府に求め続けてこられました。また、塩村委員、早稲田議員、山井議員など、我が党の何人もの議員が再三再四対策を求め、大きく報道もされました。しかしながら、政府は何ら実効性ある措置を講ずることなく四月一日を迎え、十八歳、十九歳の若者は未成年取消権を使えなくなってしまいました。
 この未成年取消権とは、もうお分かりのことだと思いますけれども、親などの同意を得ずに十八歳、十九歳の人が結んだ契約を無条件で取り消すことができるというもので、AVの出演を不本意にも契約してしまった未成年にとっては唯一の頼みの綱ともいうべきものでした。しかし、それが奪われてしまったのです。
 その結果、どんな大変な状況になっているか。この一か月弱ですけれども、この僅か一か月弱でも既にいろいろなことが起こっている、既にもう被害が広まっているかもしれない、そのことは山井委員からるる御説明がありましたとおりです。
 飲酒、喫煙、公営ギャンブルはこれまでどおり二十歳まで禁止されるにもかかわらず、AV出演は親の同意なしに契約できるようにしたのはどう考えてもおかしいという声が多く届いています。
 飲酒、喫煙、公営ギャンブルについては、若年層が肺がんなどの病気や依存症になりやすいという指摘があり、禁止が継続されたと聞いています。アダルトビデオの出演もまた、若年層にとっては特に心身に有害な影響を与える可能性が極めて高いのではないでしょうか。
 しかし、野田大臣のこの問題に対する対応、政府の対応は、余りにも冷たいものだったと言わざるを得ません。
 資料一を御覧ください。三月十六日の参議院内閣委員会での我が党の江崎孝委員の質問に対する野田大臣の答弁でございます。
 既に四年前、令和元年度に内閣府は法的検討をするとしていたことを江崎委員は指摘した上で、この被害を防ぐための法的対応について質問いたしました。これに対する野田大臣の答弁が、資料一、この下線部の一番です。今でもアダルトビデオに出演契約の場合は、その契約を取り消す、例えば消費者契約法というのがございますし、さらには、ひどいことで強要された場合には、例えば民法の詐欺とか強迫という理由で取消しを行使することが可能になっていますと、新たな法的検討についての質問にはきちんと正面からお答えにならず、今使える法律、現行法で対応が可能であるかのような答弁をされています。
 しかし、実際には全くそうではありません。資料二を御覧ください。弁護士で執筆者の、AV出演強要の被害者を支援する国際NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長伊藤和子さんの御承諾を得て、この資料を提出させていただいております。四ページから五ページにかけてでございます。
 この下線部一から読ませていただきます。
 契約取消しについて列挙される法制度はいずれも、とても行使するのが難しいものばかりです。十八歳、十九歳の被害者に対して、意に反してAV出演してしまっても、詐欺、強要を主張したら取り消せますよなどと言うのは何の慰めにもならず、極めて無責任な政府広報と言わざるを得ません。
 五ページです。
 また、政府は消費者契約法が活用できるとして周知徹底を図ると言います。確かに、不適切な勧誘などがあった場合、消費者契約法の適用により取り消すというのは、一見すると活用できるように思えるかもしれません。しかし、アダルトビデオ被害で不適切な勧誘を行うのは大抵がスカウトかプロダクションです。被害者が出演同意契約を締結するのはAVメーカーです。幾らスカウトかプロダクションからだまされても、第三者であるアダルトビデオメーカーにそのことを主張して消費者契約を取り消すことは難しいのが実情です。現行法ではこの問題は解決できず、十八歳、十九歳はこれまでより危険な立場に立たされる、そのことはごまかしようがありません。
 そういうふうにおっしゃっています。
 では、野田大臣に改めてお聞きします。親の同意がなければ無条件で取消しができていたのに四月一日からできなくなってしまった十八歳、十九歳に対して、従来と同等の対応が現行法だけで果たして本当に可能だと、今でもそう思っておられるのでしょうか。可能なのか、可能でないのか、今もそう思っておられるのか、端的にお答えください。

○野田国務大臣
 一般論として言えば、四月以降、十八歳で成人となるため、民法における意思表示の瑕疵などの取消し事由や消費者契約法における不当な勧誘行為などの取消し事由が存在しない限り、契約を取り消すことはできないと承知しています。
 アダルトビデオ出演被害の問題は、被害者の心身や私生活に長期間にわたって悪影響を与える重大な人権侵害であり、深く憂慮すべき問題です。
 このため、まず、行政府としてできることは全てやるという観点から、三月三十一日、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する関係府省対策会議を、これは局長級なんですけれども、速やかに開催して、「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージを決定したところです。
 引き続き、アダルトビデオ出演被害の根絶に向け、関係省庁と連携してしっかり取り組んでまいります。

○堤委員
 今おっしゃられた、政府が三月三十一日にぎりぎりになって慌てて出した「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージについてですけれども、もう一度、資料の二を御覧ください。三ページでございます。ここに政府のパッケージが載っておりますけれども、その下の方の下線部のところでございます。
 第一の教育、広報、啓発、これは政府も、二〇一七年以降、五年前からやっておられます、四月を集中月間にしています。しかし、年に一回、政府広報をやったからといって、全ての若年層に届くのは不可能です。政府広報が行き渡らない若年層に、政府広報や啓発活動をしっかり見なかったあなたが悪い、だから自己責任と言えるのでしょうか。
 では、資料一にもう一度戻っていただきたいと思います。下線部の二です。野田大臣は、未成年の取消権というのがその当時から余り機能していないというか、本人たちが知らない、下線部三、更なる手だてはあるんだけれどもそのことが分かっていないなどと答弁されました。まさに野田大臣のこの答弁は、伊藤和子弁護士が指摘しておられる、政府広報や啓発活動をしっかり見なかったあなたが悪い、だから自己責任と切り捨てるものではないでしょうか。
 本人たちが知らない、分かっていないのは、これまで十分な教育、広報、啓発を怠ってきた政府の責任ではないでしょうか。若者の自己責任なのか、政府の責任なのか、野田大臣、端的にお答えください。

○野田国務大臣
 私の発言は、そういう趣旨ではございません。
 私個人、国会議員としても、伊藤弁護士とはこのことについて、皆さんの御議論が始まる前から関わっておりまして、伊藤弁護士の方から、消費者庁の創設に関わった人間として、契約ということで、消費者庁の契約の法律で対応できないかということをもう数年前からやり取りをしているところで、このような発言に至ったわけですけれども。
 また、未成年の取消権というのを、じゃ、学校で私たちは授業の一環なり社会何とかで実際教わってきたかというと、誰も教わっていないということを申し上げた。逆ですよね。そういうことを教えてあげればよかったのに教えてこなかったよねということを申し上げたかったんです。

○堤委員
 私も、野田大臣はそうではないと信じております。ただ、そういうふうに聞こえるので確認をさせていただきました。ですから、やはり、しっかり政府広報にもっともっと力を入れていただきたい、要はそういうことでございます。
 しかしまた、そうやって数年前から取り組んでこられたのに、新たな法的対応をせずに四月一日から取消権がなくなってしまったということは、やはり動かし難い事実でございます。野田大臣は何かの方法をやりたかったということでしょうけれども、多分、政府の中でなかなか実際には進まなかった、野田大臣の思うとおりには進まなかったということで、野田大臣も残念な思いをされていて、今、立法府に期待をされているという状況ではないか、私、そう思っております。
 それで、同じく資料の、何だか揚げ足を取るようで申し訳ないと思うんですけれども、資料の一の下線部の四ですけれども、野田大臣は、まずは若い人たち、女性たちにしっかりと、そういうことは駄目なんだと、そして窓口があって、それを言うべきなんだとも答弁されています。ここだけを切り取れば、まるで、相談しない若い人たち、女性たちが悪いかのような、やはり自己責任を強いるかのような答弁だと。ネット上でそういうふうに批判している方も実はいらっしゃるんですね。
 でも、実際には、もう野田大臣よく分かっていらっしゃるように、たとえ相談窓口があって本人たちがそれを知っていたとしても、知らないことが多い現状でございますが、知っていたとしても、被害者本人が、人に知られたくない、特に親や家族、友人などには絶対知られたくない、先ほど山井議員からも被害者の声の御紹介がありましたように、特に、本当に子供には死んでも知られたくない、そういった思いや、たとえだまされたり強いられたものであったとしても、契約した自分が悪いといった自責の念などから、なかなか相談できない、孤立してしまうという問題の本質を御理解されていらっしゃらないのか、そういう声もありますので、そういうことはないと信じております、野田大臣の認識を改めてお聞きします。

○野田国務大臣
 違いまして、まず、今申し上げたように、やはり学校でしっかりと、十八歳、高校生の問題も出ていますけれども、大方学校でそういう話をしてくれれば、まず子供たちがそういうことに遭ったときの抑止になりますし、駄目だと。
 あと、もし万が一そういうことになったときに、今おっしゃったように、なかなか家族には言えませんし、友達にも、自分の自責の念があるから言いづらいわけですよね。そうしたときに、これは、まだこども家庭庁はできていないんですけれども、男女局の方で性被害のセンターがありますよね、そういうところがあるよということをやはりどんどん私たちが言わなきゃいけないという趣旨であります。番号も全国共通で八八九一、これについても、やはりまだしっかりと子供たちのところに伝わっていないんじゃないかなということを申し上げたかったということです。

○堤委員
 通告していませんけれども、八八九一というのはやはり覚えにくいと思うんですね。
 児童虐待の番号は何番か御存じですよね。

○野田国務大臣
 はい。一八九。

○堤委員
 一八九、「いちはやく」ですね。やはり、三桁は覚えやすいけれども、四桁になると人間というのはなかなか覚えられないんですよね。是非三桁の番号をつくっていただきたい、野田大臣のお力で。よろしくお願いします。
 資料の二の三ページに戻っていただきたいと思います。この緊急パッケージなんですけれども、この2の(1)では、「多面的・重層的な被害者保護に係る各種法制度を周知徹底」としています。先ほど述べましたように、幾ら周知しても現行法では厳しい状況なんですけれども、でも、やはり周知は大事です。先ほどのような三桁の番号、是非、四桁ではなく三桁、「いちはやく」のような覚えやすい番号にしていただきたい。
 私、台湾に県議のときに行きました。そこでもやはり三桁の番号でした。台湾は、やはり一一〇番が警察で一一九番が救急だ、それも同じです。そして、やはり三桁の番号が女性の暴力被害の相談の電話でした。ですから、女性のDVの被害ですとか性暴力の被害とか、そういったものはやはり三桁で覚えやすいものにするのが非常に有効ではないかと思っております。
 また、「運用を強化」とありますけれども、今までのどのような運用をどう改善するのでしょうか。このパッケージのところに小さく「運用を強化」と書いてあります。これを具体的に分かりやすくお示しください。

○吉住政府参考人
 答弁いたします。
 三月三十一日に決定した「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージは二つの柱から成っており、一つ目は、若年層に向けた教育、広報、啓発等の強化、二つ目は、議員御指摘の被害者保護に係る各種法制度の運用強化等です。
 この二つ目の被害者保護に係る各種法制度の運用強化等については、多面的、重層的に存在している各種法制度を相談窓口等に向けて周知し、対応を強化することとしており、内閣府においてはワンストップ支援センターに対して、警察庁においては各都道府県警察に対して周知を行うなどしました。
 このパッケージを決定した際、野田大臣から各府省の局長に対して、それぞれの持ち場において全方位で強力に取り組んでくださいとの話があったところであり、関係省庁と連携して更に取組を進めてまいりたいと思います。

○堤委員
 全方位で強力に取り組んでくださいと野田大臣から指示していただいたということです。私は、野田大臣がこども家庭庁のスタートのときの大臣であって、御党の中で野田大臣が担当であって本当によかったなと思っております。
 対策パッケージ2の(2)のところですけれども、業界団体の自主規制は、伊藤弁護士が指摘されていらっしゃいますように、政府の施策ではありませんし、自主規制で被害が防げるという政府の考えは認識が甘過ぎると指摘しておきます。
 さて、早急にこの問題に対処しなくてはならないということで、先ほど山井議員からも御紹介、訴えがありましたように、立憲民主党と野党プロジェクトチームが議員立法を作成し、与野党で協議を行っていると聞いています。AV出演被害を防ぐため、今国会でこの超党派の議員立法を成立させるべきと考えます。野田大臣、改めて御所見をお聞かせください。

○野田国務大臣
 先ほど山井委員にも申し上げたとおり、今この問題の解決のために、与野党全ての政党の皆さんが積極的に議員立法、議員提案に向けて取り組んでいただいていることに心から敬意を申し上げています。是非、速やかに、いい成案を得て、そして、子供たち、人権をしっかり守れるようにお示しいただければと願っています。

○堤委員
 やはり十八歳、十九歳は、社会経験が浅く、危険に対する判断力や対応力が未熟で、法律や相談窓口などの社会的資源に対する知識も不足しているなど、つけ込まれやすく、守らなければならない存在です。にもかかわらず、政府は、十八歳、十九歳からAV出演契約の取消権を一旦奪ってしまったわけです。取り返しのつかない大きな責任があると思います。せめて、この議員立法の後押しをお願いいたします。
 また、せっかく、こども家庭庁は子供と若者も含むということですから、できれば、私個人としては、例えば三十歳未満までに、もうこの際、未成年取消権ではなく、若年取消権、若年層取消権みたいに拡大していただけたらありがたいなと思っております。
 とはいえ、野田大臣に共感する点も多々あります。資料一の下線部五のところですけれども、野田大臣が、アダルトビデオに強要されることは未成年であっても成年であっても女性にとってはいけない、あってはならないとお答えになっている点でございます。
 AV出演の被害者には、中年の女性ですとか男性やトランスジェンダーの方もおられるかもしれません。年齢、ジェンダーを問わず、また、アダルトビデオだけでなく、いわゆるJKビジネスも強いられることはあってはならない、それもまた性暴力にほかならないと考えます。性暴力の根絶に向けて、野田大臣のお力をいただければ大変ありがたいと心から願っております。
 さて、政府の法案には、子供の権利利益の擁護はこども家庭庁の任務とされていますが、これは具体的にはどのような施策を考えておられるのか、室長、御説明よろしくお願いいたします。

○谷内政府参考人
 お答えいたします。
 政府提出法案におきましては、こども家庭庁の任務といたしまして、子供の権利利益の擁護を掲げております。
 議員の御質問になっておられますその具体的な事務でございますけれども、例えば、四条十六号にある虐待の防止、さらには、十七号にある、いじめの防止等に関する相談の体制その他の地域における体制の整備、それ以外に、十八号で、包括的な条項になっておりますけれども、教育、保育施設等や子供が活動する場等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み、いわゆる日本版DBSの導入に向けた検討や、子供の性的搾取、性被害の防止、児童の権利に関する条約に係る国内施策の取りまとめなどが挙げられるものでございます。

○堤委員
 子どもの権利条約三十四条では、「締結国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。」とされています。また、我が党の法案にも、二十三条に、「子どもが性犯罪及び性暴力の被害者、加害者及び傍観者とならないように」と明記しています。しかし、政府案には、性的搾取、虐待、性暴力、性犯罪については明記されていません。
 上述のように、現行法では、年齢、ジェンダーを問わず、子供や若者をあらゆる形態の性的搾取、虐待、性暴力から守るのは困難だと考えますけれども、こども家庭庁としてしっかりと対応していただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 これについて、どのように対応するのかお聞きいたします。よろしくお願いします。

○野田国務大臣
 とても大切なことであります。
 性暴力、性犯罪は、犯罪となる行為も含む、何度も繰り返しになりますけれども、重大な人権侵害であります。
 とりわけ、子供や若年者に対する性暴力や性犯罪においては、家族を始めとする身近な者からの被害は特に潜在化したり深刻化しやすくて、被害に遭うと一生拭い難い影響が生じるために、子供の健やかな成長にとって大変重要な課題であるということは認識しています。
 子供に対する性暴力の防止等に関する事務は、こども家庭庁設置法案においては、第四条第一項第十八号、ここに掲げる子供の権利利益の擁護に関することに当たります。
 こども家庭庁においては、これまで国家公安委員会及び警察庁が担ってきた子供の性被害防止プランの作成、いわゆる日本版DBSの導入に向けた検討などを担います。また、性犯罪・性暴力被害のためのワンストップ支援センターの機能強化など、子供に限らず全ての年代の性犯罪、性暴力への対策については、私の下で、今、内閣府男女共同参画局が担っているところで、こども家庭庁においては、子供の最善の利益の観点から、内閣府と密接に連携して取り組んでいきたいと思います。

○堤委員
 今お話がありました性犯罪・性暴力の被害者のためのワンストップセンター、ここは本当に随分ここ数年で頑張っていただいていると思っております。
 ただ、十代、二十代の若い人たちを狙ったこういう性的搾取は全国で増えてきているんですけれども、若者に限って支援する団体は、首都圏などにはありますが、残念ながら地方にはほとんどございません。したがって、四十七都道府県全てに既に今開設されているこのワンストップセンター、ここでも、アダルトビデオ出演の被害やJKビジネスなどの被害を受けた方々の支援に精通した民間団体、今それがあちこち首都圏ではあるわけですから、ここに相談した場合と同様の支援ができるようにすべきだと思います。
 例えば未成年取消権、これも、行使の仕方、したことがないというところが、私も、我が県、福岡県の性暴力センターに聞いてみたんですけれども、そういう相談は聞いていませんということでした。そういう被害がないわけではないんですけれども、ワンストップ支援センターに相談できるというふうに、やはりまだそれが周知されていない、知らない方が多いということだと思います。
 しかし、ネットで検索して、多分ぱっぷすさんですとか、先ほど山井先生からありましたようなそういったところを検索してやはり相談する方がいらっしゃるという状況ですが、地方にも被害者がいて、それがまずつながっていない、そしてまた、そういった相談があったとしても、そこに適切に対応できるかどうかが少し疑わしい。
 といいますのも、実は、あるところでの話で、いわゆるJKビジネスですとか、そういったところで契約をして、お金をもらって、そうやって働いている人に対しての性的な虐待、性暴力というものはないんだというふうなことをおっしゃる、そういった人の相談は受けないという方が実はいらっしゃったんですね。でも、そうではないと相談員の人たちが声を上げて、そのストップセンターでも、そういう人たちにも、ちゃんと相談を受けるということになったんですけれども、そういったこともありますので、こういった、どのセンターでも被害者が支援を求めた場合に適切に支援が提供される体制を取っていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。吉住審議官、お願いします。

○吉住政府参考人
 答弁いたします。
 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、現在、全都道府県五十二か所に設置され、緊急避妊薬の処方や証拠採取など医療的支援、弁護士を紹介するなどの法的支援、相談、カウンセリングなどの心理的支援など、地域における被害者支援の中核的な役割を担っております。
 委員御指摘のとおり、アダルトビデオ出演の被害に遭われた方やJKビジネスの被害に遭われた方が各地域のワンストップ支援センターにおいて適切な支援を受けられるようにすることは、大変重要なことだと認識しております。
 このため、内閣府では、支援に必要な知識やスキルについてワンストップ支援センターの相談員向けのオンライン研修を実施しており、引き続き、アダルト出演の被害の問題に関しても研修を進めるとともに、性犯罪、性暴力被害者支援のための交付金を活用し、ワンストップ支援センターの体制を強化することにより、被害者支援の充実を進めてまいります。

○堤委員
 吉住審議官、ありがとうございました。
 さて、性暴力の被害に遭った場合、七十二時間以内に緊急避妊薬を服用することで、およそ八割の確率で妊娠を防ぐことができるとのことです。また、証拠の採取という点でも、迅速な対応が必要です。
 しかしながら、内閣府が三年前の二〇一九年に実施した調査によれば、性暴力の被害に関する電話相談のうち、七十二時間以内に寄せられたものは一四・七%、二割に満たないというのが現状でございます。被害直後、七十二時間以内に被害者がワンストップ支援センターに速やかにつながるには、もっと広く、もっと着実に情報を届ける方策、例えば三桁の相談電話番号とかを講じるべきだと思います。
 あわせて、性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもならないための生命の安全教育、これも始まっていますが、まだまだ広がっていません。ちなみに、福岡県では、全ての公立の小中学校にアドバイザーを派遣して、そういう講座を行うように予算をつけていただいております。
 この委員会で、私、多分三回お聞きして、今日、四回目なんですけれども、先日、この法案の本会議で岸田総理は、子供予算の倍増を目指すと。これまで何人もの委員の方に岸田総理は、子供予算の倍増を目指す、そう答弁されているということはもう明らかなわけですね。
 この際、野田大臣からも是非、通告はしておりませんけれども、思いですので、是非倍増を目指すという決意を、後ろの方はあんちょこを渡さないでいただきたいんですが、決意を述べていただきたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○野田国務大臣
 大丈夫です。私が過去に言ったことを書いてあるので、あんちょこでは。
 総理は、そうやって、将来的には倍増というお話がございました。私の立場からすると、まずはこども家庭庁を、皆さんの御審議の中で成案を得て、そして、その下で体系的に、優先順位とか必要な数とかも精査しながら、子供にとって最善の政策に資する財源というのが必要だ、そんなふうに思っています。
 決してないがしろにしているわけではなくて、やはりきちっと実効性のあることをしたいということで、規模とか期限を言うことが現に子供たちの幸せを担保できるかということは、そうではないと思うので、そこはしっかりと取り組むということをお約束したいと思います。

○堤委員
 やはり計画性がないといけないと思うんですよね、政府の施策は。ですから、例えば五年後に倍増と防衛省の方はおっしゃった、そういう見込みがないと、やはり施策を少しずつ進めていく、着実に進めていくということはできないと思いますし、もう野田大臣御存じのように、この三十年間ずっと、先進国から、子供の政策、遅れてきているわけですね。
 先日、私は、少人数学級ということで、少人数といっても三十五人ではなく、先進国では二十人が平均なんですね。でも、日本はまだまだ少人数学級が三十五人、そういう状況ですし、また、今度質問しようと思っていますけれども、幼稚園や保育園のクラスの保育士一人当たり、幼稚園教諭一人当たりの子供の数も、世界で一番多いんですよね。
 幼稚園や保育園は、私、スウェーデンに滞在していたときもありますけれども、昼間の家ということなんですね。昼間過ごすところは、学校や施設ではなくて、おうちでなければいけない。そうすると、やはり、一クラス三十五人とか三十人とか、そういった状況で家のようにゆっくりできるんだろうかと。
 野田大臣も、例えば自分の子供さんと、朝の例えば七時から夕方の七時まで、保育園はそのくらい預かっている方が多いと思うんですけれども、一人で一人の子供を見るのでさえ大変な状況なのに、三十人とか三十五人とか、ちょっと考えられない。だから、それで、プラスして保育士さんを、自分たちの予算の中で、そこは予算がついていないけれども配置している保育園もたくさんあるんですよね。
 そうすると、この間、処遇改善ということで、九千円ということで政府はうたわれましたけれども、実際には、九千円が来るのは配置している保育士さんの数分だけなんですね。でも、頑張って、身銭を切って保育士さんをたくさん配置しているところは、それを、九千円じゃなくて、みんなで割ったら五千円とか六千円とかにしかならない。そういう頑張っている保育園や幼稚園ほど非常に低い加算にしかならなかった、そういった現状もあります。
 そういったことを解決するにはやはり処遇改善が必要で、そのためには、幼稚園のクラス数を小さくする、小学校のクラス数を小さくするということのためには、かなり多額の予算が要ります。これはもう実際そうです。そうすると、倍増でも本当に足りるのかなと私は思うくらいなんです。
 だから、できるだけ早めに、本当に、三年で倍増とか、五年なんて言っていたら、もうこの国の将来はなくなりますよ。本当に、緊急に、これまでの遅れを取り戻さないといけないわけですから。そして、コロナ禍の中で、やはり、消毒ですとか検温だったりとか、本当に大変な思いをされているエッセンシャルワーカーの人たちにこそ、もっと業務を軽減する、そのためにもクラス数を減らすということがまず大切だと思っております。
 そういったことも含めて、野田大臣、もう一度、済みません、お願いいたします。

○野田国務大臣
 長らく私も子供政策に取り組んできて、なかなか目に見える形で、意見の集約とか、何をするべきかとか、どのようなお金が要るかというのが集中的に議論できない状況に長らく日本の政治があったと思います。
 今般、皆様方が積極的に、子供基本法なり、又は様々な、子供に集中した役所なり基本的な考え方を出していただくことで、今、潜っていたような問題がどんどん出てきて、ですからこそ、財源については規模とかを決めてしまうとやはり硬直化してしまうので、是非、こういうところで様々な問題を出していただく中で収れんさせていただき、法案が成立した暁には、やはり優先順位をしっかりつけて、必要なことを、例えば保育園の話も、ちょっと前までは待機児童解消だったんです。数の解消。でも、今はもうそういう時代ではなくて、今言ったクオリティーとか働く人、そんなようにフェーズが変わってきていることにしっかり対応できるように取り組みたいと思っています。

○堤委員
 思いは本当によく分かるんですけれども、首相が倍増と言っているのに、その担当の大臣が言わないというのは、やはり、閣内不一致といいますか、ちょっとおかしいんじゃないかなと。是非言っていただいて、進めていただきたいと思います。もう一度、よろしくお願いします。

○野田国務大臣
 方向性は一緒です。ただ、私はやはり実質預かっている身なので、総理の子供に対するポジティブな思いをきちっと実現して、ただ、お金がつきました、でも子供はハッピーになりませんではいけないということで、担当大臣としては、そうやって実効性のある取組をしたいとお誓い申し上げている次第です。

○堤委員
 何をするにもお金は大変必要ですし、特に、少人数学級にしていくには本当に多額のお金がかかります。待機児童もまだなくなったわけではありません。
 そして、どんどん日本は、地方創生の担当大臣もしてよく御存じのように、集中して非常に待機児童が多いところと、逆に、地方の方では子供たちが少なくなって、今度は保育園が立ち行かない、幼稚園が立ち行かないというところもあるんです。そういうところは、逆に地方は二十人学級になっていますよということになれば、じゃ、地方に行こうかと。
 二十人学級でもちゃんと保育園も幼稚園も経営が成り立ちますよ、そういうふうにすれば、地方創生という観点からもいいかもしれません。そういったことも含めて、やはり予算をつけていただきたいというふうに思っております。
 最後になりますが、子供に対するあらゆる人権侵害の未然防止策とともに、被害を受けた子供の権利擁護、子供の最善の利益に基づく対応など、本気で子供の命と尊厳を守る、子供の権利を実際に守るための強い権限を持つ子ども省、こども庁ではなく立憲民主党は子ども省と言っております、これをするには、やはりまたお金がかかる、予算が必要なんです。
 子供関係予算の倍増、子どもの権利擁護委員会の設置などを明記いたしました立憲民主党提出の子ども総合基本法、こちらの成立へ皆様の御支援をお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。