堤かなめのこれまでの質問
「208回通常国会」(2022年1月17日~6月15日)
「210回臨時国会」(2022年10月3日~12月10日)
第208回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 令和4年4月28日
○堤委員
立憲民主党の堤かなめでございます。
まず、限られた時間でありながら、大変内容の濃い貴重な御意見をいただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。
では、まず野村参考人にお聞きします。
政府提出のこども家庭庁設置法案には、第七条にこども家庭審議会の設置の規定がございます。参考人は同審議会とコミッショナーの関係についてどのようにお考えか、お聞かせください。
○野村参考人
質問ありがとうございます。
御指摘のこども家庭審議会は、こども家庭庁に置かれる諮問機関としての審議会に当たるものというふうに理解しています。こども家庭審議会が専門的な立場から内閣総理大臣又はこども家庭庁長官に意見を述べる、そういう仕組みで、これは縦割り行政を排するという意味ではとても重要な仕組みだというふうに見させていただきました。
ただ、他方で、こども家庭審議会は諮問機関であることから、内閣総理大臣あるいは関係大臣、あるいはこども家庭庁長官ですか、その諮問に応じる、いわば政府から意見を求められる、そういう制度設計になっている。
子供コミッショナーは、政府から距離感を保った子供の代弁者というところに意義がありますので、子供の意見やこれを踏まえた発意で活動する。つまり、諮問に応じてということではなくて、子供からの、あるいはそのコミッショナーの発意をもって動くということが何よりも大事で、その意味では、こども家庭審議会は、それはそれとして重要であるとしても、子供コミッショナーとは原理的には違うものというふうに理解しています。
○堤委員
それでは、野村参考人からは、コミッショナーの設置は、児童の権利条約を批准している国、締約国の中核的義務であるということ、それから、世界七十か国以上で既に設置されている、また国内では四十三市区町村に既に設置されている、そういったお話がございました。
そこで、全員の参考人の皆さんにお聞きしたいんですけれども、子供コミッショナーに当たるものとして、我が党立憲民主党案では子どもの権利擁護委員会を設置するとしております。このことについて、不十分な点もありましたら、参考人の皆様から御評価をいただきたい。あるいは、子供コミッショナー全般に関してどのように思っていらっしゃるか、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○古賀参考人
私、国レベルでは、なかなかコミッショナーというのは難しいんじゃないかという印象を持ちます。
というのは、我々、有識者会議でいろいろな議論をして、第三者的な立場の方のコメントもいただいていますけれども、やはりそれを含み込まない限り、国の政策に関わるところでは議論は進まなかったというように思います。
同時に、個別の地域でのいろいろな事例や係争の問題になってくれば、これは、いじめが先ほど紹介されていましたが、いじめの場合に端的でございますけれども、実際、第三者の人が入ってやっていくというスタイルが取られております、現状でも。それをもっと更に促進して、精緻にしていくという作業が早いのではないかなという印象があります。
というのは、教育ぐらいステークホルダーがたくさんいる領域はないんですね。ですから、この辺のところの様々な立場の方々に同意いただくという作業からいうと、今のような、地域レベルでやっていくということがまず優先されるのではないかと思います。
○土肥参考人
子供コミッショナーの組織の在り方、どういう位置づけにしていくかということについては、私、専門でもありませんので、ちょっと具体的に意見を持ち合わせているものではないんですけれども、やはり一番重要に考えなければいけないのは、子供の声がきちんと響いていく社会になっていたりだとか、子供の最善の利益を考えていくということが重要だと思いますので、それに合わせて検討していく必要があるんだろうなというふうには思います。
○野村参考人
立憲民主党案の子どもの権利擁護委員会、これは合議制の機関ですけれども、私は重要なものとして基本的に評価をしています。これは、各国によって、独任制のものがあったり、合議制のものがあったり、それはいろいろで、日弁連の意見書でも実は合議制を提案しています。その観点から、とても重要な仕組みだというふうに理解しています。
なお、先ほど古賀参考人の方から、個別的な地域の問題として解決すればいいのではないかというお話がありましたが、実は、我が国の法制度というのは、自治体でやっているほとんど全てのことはその根拠が法律にあるという仕組みになっています。その意味では、地域で起こっている事柄、地域ごとの運用の問題は地域で解決すればいいということになりますけれども、その大本をたどっていくと、実は国の法律に行き当たることというのがたくさんある。多分、地方分権も同じで、これは地方の問題でしょうというふうに言っていて、確かに、地方の運用を直せばいいところもあるんですけれども、寄せ集めてみると、それが国の基準であったり、あるいは政省令の問題であったり法律の問題であるということがいっぱいあるということに、この間ずっと気がついてきたわけです。
子供の問題も、当然、地域レベルで行われていることはほとんどだけれども、その大本をたどっていくと実は法律があって、そこに手をつけなければ解決できない問題というのはたくさんあるだろうし、人権侵害というのは全国的な規模の問題でもあるので、国にコミッショナーを置くということは不可欠であろうというふうに考えていますし、御質問は立憲民主党案だと思いますけれども、立憲民主党案は私は評価をしています。
以上です。
○末冨参考人
子どもの権利擁護委員会に関する規定につきましては、私も幾つかの重要な要素を含むものと考えております。
一つは、子供の権利の重大事態に関して、特定侵害事案というふうに位置づけられていたと思いますが、に関しての調査を国が行うことができるという機能自体は、大変重要なものであると思います。
いじめ隠蔽等に関して、現在も文部科学省が官僚を派遣し調査を行うことはありますが、実は、その官僚が持つ権限というのは法には規定されていないんですよね。とても重大なことが起きたから本省として調査をする、それはとても大事なんですが、じゃ、その官僚自体に資料の提出を命じたりする権限があるかというと、それはないわけです。だからこそ、特定侵害事案に対して国としての権限を確立し、子供の権利が地方自治体において守られていないときに、しっかりと介入をし、そして改善の方策を示し、フォローアップをしていく仕組みは不可欠だと考えます。
しかしながら、このような機能を、直ちに、では、国として独立した組織にできるかと言われますと、それには少し丁寧な議論と検証を積み重ねた方がよいというのが私自身の立場です。
と申しますのは、私も教育学の専門家であり、いじめの重大事案については相談を受ける立場にもございますが、例えば、調査権を行使したり、あるいは勧告権を行使したりするときに、私自身にそれほどの十分な専門性があるかと言われれば、その点については疑問です。それは、弁護士の方たちやカウンセラー、ソーシャルワーカーといった実際の子供の権利の擁護の最前線におられる方たちも、果たして務まるだろうかと思われると思います。
そうしたことを考えたときに、求める要件、そして責任の範囲を明確にし、子供を守り切れる専門家集団をこの国に育て、活躍できる場を広げていくことが、まず先に立つべきであろうというふうに考えます。
とはいえ、子供の権利を守る仕組み、尊厳をしっかりと尊重する仕組みというもの、更に言えば、ほかの参考人もおっしゃっておられましたが、子供たちの意見を集め、国の施策に反映する仕組みは実現をされるべきですし、そうした意味において、子供の権利の擁護機関というものが機能していくことこそが大変大事なことかと考えます。
以上です。
○堤委員
それぞれ大変勉強になる御意見をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、野村参考人にお聞きします。
実際に自治体で相談活動も行っていらっしゃるということですので、自治体の相談・救済機関がどのように問題解決を図っているのか、具体的な事例も交えてお聞かせください。
○野村参考人
御質問ありがとうございます。
グッド・プラクティス集というのを資料でお配りさせていただきましたけれども、これは、実はこのために作ったというのではなくて、むしろ、シンポジウムを企画していて、たまたま各自治体から、このグッド・プラクティス集を作るということを提案をさせていただいて、いただいたものをまとめたもの、ある意味では非常にタイムリーであったし、非常に貴重なものだというふうに私も思っています。
自治体の相談・救済機関は、多くの場合、子供等からの申立てに基づいて、あるいは自己発意でというのもあります、調査をし、意見表明をし、勧告をする、そういうのが基本的な仕組みになっています。
制度改善については、先ほどお話をした子ども一一〇番の家の話がありますが、そのほか、十七ページに、世田谷区の特別支援に関して、保護者の付添いができない場合に通常学級に通うことができないという問題、そういう相談が寄せられて、そういう問題について意見表明をしたという例があります。自治体の財政にも及ぶ、結構踏み込んだ内容であったかなと思います。
そういうのもありますけれども、多くの場合、調査を開始したことで、学校であるとか自治体の認識が深まって、それを手がかりとして調整的に働きかけるという例がかなり多いというふうに思います。その意味では、申立て、勧告、意見表明ということが制度上は非常に目につきますけれども、この調整活動の重要性というのが自治体の中では非常に特筆すべきもの、あるいはキーワードであるかと思います。
個別救済の事例では、先ほど来、いじめの事案が出ていますが、私、いじめの重大事態の調査は相当やっていまして、非常に耳が痛く聞いておりましたが、このいじめの事案につきましては、それから、教員の不適切な対応の問題というのも現場では結構相談があります。
もちろん、いじめについては、いじめ防止対策推進法の学校への設置の仕組みであるとか、そういうことを機能させることはとても大事だと思うんですけれども、多くの場合、その入口の問題として、先生が子供からの訴えに対して、陥りがちだといえばそうなんですけれども、これは大したことないとか、被害妄想的ではないかとか、お互いさまでしょうとか、あるいは、何度も言ってくると、またかというような、そういった先入観を持って、聞いてもらえないという事例があって、それが相談・救済機関に持ち込まれることが結構あります。
いじめは、行為プラス傷つきで評価される。行為だけで評価されるわけではありません。なので、大したことないでしょうと言っているのは行為を評価しているので、傷つきをどこかで見逃しているということでもあります。
そうすると、この自治体の相談・救済機関は、子供から聞いて、どういうふうに傷ついたのか、つまり、大したことないことでも、こんなに傷ついているんだという気持ちが大事で、それを学校等に一緒に伝えに行く。もちろん、子供が伝えてほしいというふうに望んだ場合には一緒に伝えていくということ。それをすることで本来のルートに乗せていく、機能不全になっていたものをルートに乗せていく、そういう役割もあります。
なので、個別救済であると同時に制度運用改善にもなっているという意味で、非常に、自治体あるいは教育委員会も含めて、重要な仕組みであるというふうに理解しています。
○堤委員
ありがとうございます。
私の地元には八市町村ございますけれども、そのうち三つの市町村で、今、この資料、野村先生の資料で救済機関が整っていると。しかし、そうでないところも、私の地元でも五つあるということです。
やはり、全国にこういった救済機関を置くためには、国が準備期間を取ったとしても、やはり国の法律できちんと位置づけて、子供たちを重層的に守る、そういった制度を整えていただきたいと思っております。
本日はどうもありがとうございました。時間となりました。
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