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堤かなめのこれまでの質問

第208回国会 衆議院 本会議 第27号 令和4年5月17日

○堤かなめ君
 立憲民主党・無所属の堤かなめです。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました、内閣提出のこども家庭庁設置法案及びこども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に反対、自民及び公明提出のこども基本法案に賛成、我が党提出の子どもの最善の利益が図られるための子ども施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案に賛成、維新提出の子ども育成基本法案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
 私たち立憲民主党は、かねてから、チルドレンファーストの理念を掲げ、子供、子育て政策を一元的に立案、遂行する子ども省の創設を訴えてきました。ようやく私たちの考えが浸透してきたことと思いますが、政府案には、理念や実効性において大きな懸念があります。
 まず、新組織の名称についてです。
 検討当初はこども庁という名称とされていたにもかかわらず、最終的にはこども家庭庁とされました。子育てにおいて家庭が大切であることに異論はありませんが、貧困、虐待等に苦しむ子供たちにとって家庭が安心できる場にはならず、家庭という言葉に否定的な感情を持つ方々もいます。
 昨年、我が党が子ども総合基本法案について検討した際も、同様の議論を行いました。以前は、子供は家庭を基盤に成長するものであり、家庭を支援することによって子供の育ちを支えるべきであるという考え方がありました。しかし、最近は、一人親家庭や家庭のない子供たち、また親による虐待を受けて苦しんでいる子供たちも増えていることから、あえて家庭という言葉は使わず、子供の最善の利益を図ることを正面に据えた方がいいのではないかと思います。
 立憲民主党は、社会全体で子供を支援すべきと考えており、こども家庭庁という名称には疑問があります。
 また、政府案においては、文部科学省所管の教育はこども家庭庁の所掌事務に含まれていませんが、子供施策を総合的かつ効果的に実施するためには、教育も含め、子供施策を一元的につかさどる新たな省の創設が必要です。
 岸田総理は、令和版所得倍増、子供政策予算の倍増、資産所得倍増と三つの倍増を次々と打ち出されました。倍増の元祖、池田勇人元首相は、一九六〇年に実質GDPを十年以内に倍増するという計画を策定し、僅か四年余りで見事達成されました。
 一方、五月十三日、衆議院内閣委員会での泉健太立憲民主党代表の質問に対し、岸田総理は、三つの倍増について、いつまでに倍増するとか、そうした期限は区切っていないと答弁され、具体的な計画がないことが明らかとなりました。
 しかし、総理が倍増と言うのですから、池田元首相のように、任期中に倍増を実現してくれると期待するのが当然です。岸田総理は、百年後の実現でも約束を守ったことになるとお考えでしょうか。総理の責任として、すぐにでも期限を明らかにし、計画を立てるべきです。
 立憲民主党が予算倍増にこだわるのは、この三十数年、日本の子供政策予算がずうっと先進国最低レベルだったからです。虐待、いじめ、引きこもりなど、我が国の子供たちの状況はどんどん悪化しています。その帰結が、とどまることを知らない少子化です。超少子化という国難、有事ともいうべき事態を招いたのは、自民党政権の悪夢の三十年ではないでしょうか。
 この三十年の遅れを取り戻す、子供たちを、子育てを社会全体でしっかり支える、そのためには予算の倍増が不可欠です。岸田総理は、予算委員会において、子供政策に関する予算は将来的には倍増、これはしっかり目指していきたいと発言をされています。しかし、野田大臣からは、その点についての明言はありませんでした。
 立憲民主党は、児童手当については、所得制限をなくし、高校卒業年次まで延長することや、児童扶養手当の拡充を目指しています。子供政策に係る十分な予算の確保に関する規定がなくては、具体的な施策の拡充は実現しないのではないでしょうか。
 また、学校においていじめなどの重大な権利侵害事案が起きた際に、子供の権利擁護の状況を政府から独立した立場から監視し、原因を究明するために必要な調査及び再発防止のための勧告を行うことができる子供コミッショナーを設置する必要があります。しかし、政府案においては、子供コミッショナーの設置に関する規定はなく、また、委員会の審議においても、政府から前向きな答弁はありませんでした。
 こうした問題点を改善するため、立憲民主党は、今年三月に子ども総合基本法案を提出し、委員会でも並行審議されました。さらに、委員会において修正案を提出いたしました。しかしながら、与党は、子ども総合基本法案を否決し、さらに、私たちの提出した政府案に対する修正案も否決したため、政府案には反対せざるを得ないという結論に至りました。
 自民及び公明提出のこども基本法案については、賛成いたします。
 本法案については、当初、与野党協議の場が置かれ、共同で立案作業に当たってきました。協議の結果、立憲民主党の子ども総合基本法案に明記した子どもの権利条約の理念、子供から若者までの切れ目のない支援、子供に関する個人情報に対する取扱い、さらには、子供コミッショナー設置の今後の検討が本法案に盛り込まれました。
 特に、子どもの権利条約の理念については、いわゆる四原則である、差別の禁止、子供の最善の利益、生命、生存及び発達に対する権利及び子供の意見の尊重に相当する内容を規定することができました。これにより、各府省にまたがっていた子供施策に横串を刺す理念法が制定されることになります。
 一方で、基本理念に、子供の養育について、家庭を基本とし、保護者が第一義的責任を有することや、子育てに伴う喜びなど主観的な内容が盛り込まれている点は懸念される事項であり、引き続き、見直しを求めていきます。
 なお、維新提出の子ども育成基本法案については、組織の在り方、基本理念において認識が異なる部分があることから、反対いたします。
 私たち立憲民主党は、これまでの社会や大人の都合を優先した少子化対策ではなく、子供自身を優先するチルドレンファーストの子供政策を進めます。具体的には、生まれ育った環境や経済的理由に左右されず、誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現を目指しています。過度に家庭に責任を負わせるのではなく、社会全体で子供の育ちを支えるという理念の下、チルドレンファーストの政策を進めていきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)