堤かなめのこれまでの質問
「208回通常国会」(2022年1月17日~6月15日)
「210回臨時国会」(2022年10月3日~12月10日)
第210回国会 衆議院 環境委員会 第2号 令和4年10月28日
○堤委員
皆様、おはようございます。立憲民主党の堤かなめでございます。
我が党の近藤昭一議員からも質問がございましたが、私も、地球温暖化、気候変動対策について質問させていただきます。
今年の夏の暑さは尋常じゃなかった、こんな暑さはもう耐え難い、そう感じた方も多いかと思います。日本の最近三十年の猛暑日の平均日数は、一九一〇年から三十年間の平均の約三・三倍に増加している、つまり、およそ八十年で三・三倍にも増加しているということです。また、近年、豪雨災害が激甚化、頻発化し、世界各地で甚大な被害が発生しており、地球温暖化、気候変動対策はまさに待ったなし、一刻の猶予も許さない状況でございます。
そのような中、地球温暖化及び気候変動の原因と考えられている温室効果ガスの削減のための切り札として注目されているのが4パーミルイニシアチブでございます。
この取組がスタートしたきっかけは、二〇一五年にパリで開催されました気候変動枠組み条約第二十一回締結国会議、COP21でございます。フランス政府が提案し、本年十月時点で日本を含む七百三十九の国や国際機関が参画しております。
ところが、日本ではこの4パーミルイニシアチブという言葉すらほとんど浸透しておりませんので、少し説明させていただきます。
4パーミルとは、千分の四、〇・四%のことで、全世界の土壌に含まれる炭素の量を毎年千分の四ずつ増やしていけば、大気中の炭素、CO2を相殺することになり、結果的に炭素の増加量をゼロに抑え、脱炭素を実現できるという考えに基づいております。
現在、人間が経済活動によって大気中に排出している炭素は年間約百億トンずつ増えていると言われております。ここから草や木や竹などの植物によって吸収される量を差し引きますと、毎年四十三億トン排出が増えているという計算になります。一方で、土の中には一兆五千億から二兆トンの炭素があるとされており、そのうちの表層三十センチから四十センチ部分には約九千億トンの炭素があるとされています。そこで、この土の表層にある約九千億トンの炭素を年間約四パーミル増やすことができれば、四十三億トン分の排出量の大半を帳消しにできるということになります。
では、どうやって土壌に含まれる炭素の量を増やすのでしょうか。
草や木や竹などに含まれる炭素は、そのままにしておきますと、微生物の活動等により分解され、二酸化炭素として大気中に放出されてしまいます。しかし、堆肥や緑肥を使ったり、雑草を除草せず、草の根を利用して農地の土壌を管理する草生栽培ですとか、木材や竹などを炭にしてバイオ炭として土壌に入れることで、炭素を土壌に閉じ込め、大気中への放出を減らすことが可能となります。さらには、土壌に閉じ込められた炭素が透水性や保水性を改善し、根粒菌や硝化菌などの微生物の増殖を促進するため、土を豊かにし、作物の収量を増やすことができます。すなわち、地球環境に負荷をかけないで、与えないで、なおかつ生産性も上げられ、温暖化抑制と食料安全保障を両方とも同時に達成できるということになります。
そこで、一点目に、この4パーミルイニシアチブの評価についてです。
本年三月二十九日に農研機構が発表した調査によりますと、農地の炭素量増加による三つの相乗効果、作物の増収、温暖化の緩和、窒素投入量の節減、この三つを検証をしたものになっておりますが、この農研機構の調査結果も踏まえまして、政府は4パーミルイニシアチブをどのように評価しているのか、お聞きいたします。
○岩間政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘ございました4パーミルイニシアチブでございますが、農地土壌への炭素貯留を通じまして地球温暖化の緩和と農業生産性の向上の両立を図る国際イニシアチブでございます。みどりの食料システム戦略を始めとする我が国の政策的方向性と整合的なものというふうに考えてございます。
また、農地土壌への炭素貯留につきましては、委員御指摘ございました農研機構の研究成果がございまして、その効果が裏づけられているというふうに受け止めてございます。
このイニシアチブは、炭素貯留の取組を国際的に広げていく上で重要な役割を果たしているというふうに認識しております。
我が国としても、二〇一五年の立ち上げの当初から参加するとともに、科学技術委員会というのがございまして、そこでは農研機構から専門家を派遣しているということでございます。
○堤委員
ありがとうございます。
では、二点目に、我が国でも整合的である、効果が裏づけられているということでございますけれども、世界ではこの取組がどのように展開されているのか、およそ十年の取組で得られた知見、成果や課題についてお聞かせください。
○岩間政府参考人
お答え申し上げます。
この4パーミルイニシアチブでございますが、現在、我が国を含む四十か国を始めとして七百を超えるパートナーが参加しているということでございます。
このイニシアチブでは、二〇二〇年に戦略計画を定め、各国の炭素貯留の実施能力の向上ですとか意識の向上、それからステークホルダー間の協力の促進、あるいは炭素貯留量の測定に関する協力等の取組が展開されているということでございます。
一方で、この農地土壌への炭素貯留の取組、これを世界的に展開していくに当たりましては、幾つか充実させていくもの、例えば、各国が気候や土壌条件、作物生産の実態等に応じた取組を進めていく、あるいは、農業者の行動変容を促していくための土壌炭素貯留に対する意識を向上していく、それから、特に途上国でございますが、土壌炭素貯留を気候変動施策として十分取り上げていく、こういった取組を充実させていく必要があると承知してございます。
○堤委員
岩間審議官、ありがとうございます。
それでは、先日、私は、日本で初めて、そして現時点では都道府県の中で唯一4パーミルイニシアチブに取り組んでいる山梨県を視察させていただきました。山梨県は、ブドウ、桃、スモモの生産量が日本一の果樹王国でございます。
そこで、その取組を示した資料一を御覧になっていただければと思います。
一ページ目ですが、果樹園で炭素貯留効果を更に大きくする方法として、剪定枝バイオ炭を作っておられました。果樹の剪定枝には、光合成によって多くの炭素が蓄積しております。そこの図にありますように、チップ化や堆肥化して土壌に施用、土壌に入れても炭素を貯留できますけれども、それではいずれ分解して放出してしまう、ほとんどがですね。そこで、バイオ炭にする、炭化することでより多くの炭素をより長期間土壌中に貯留することが可能となるということでございます。
そして、裏の二ページ目を御覧ください。
炭化の方法なんですけれども、持ち運び可能な、そこの図にありますように、簡単な無煙炭化器を使用されておられます。これはステンレス製で、例えば直径一メートルのものですと、五、六万円するということでございます。そして、このようなものを使って、剪定したその場所ですぐにバイオ炭を簡単に作ることができる。したがって、原料や炭の運搬で発生する二酸化炭素もほぼゼロである、そういった取組でございます。
ほかにも、4パーミルによって価値を高めて、より高くブドウなどを販売するなどの取組もなさっておられます。
このような一連の山梨県における4パーミルイニシアチブの取組、ここでは仮に山梨方式と呼びたいと思いますけれども、そこで、山梨方式は、農水省が進めておられるみどりの食料システム戦略、先ほど審議官の方からもお話がありましたが、有機農業の農地を二〇五〇年までに全体の約二五%にするなどの意欲的な目標を掲げたものですけれども、この戦略とも整合性、親和性があると思います。
政府はこの山梨方式をどのように評価していらっしゃるのか、お聞きいたします。
○安岡政府参考人
お答えさせていただきます。
委員から御紹介のありましたバイオ炭については、農業の面から見ると、土壌改良資材の一つとして土壌の透水性など物理性を改善する効果があるとともに、今委員から御説明があったとおり、農地土壌への炭素を貯留する効果もあるというようなものでございます。
このため、バイオ炭を進める山梨県の4パーミルイニシアチブの取組については、具体的には、果樹産地で発生する剪定枝を活用するなど、まさに地域の農業生産の特性に合わせた取組、これをまさに県で、全体として、県を挙げて取り組まれているということに加えて、農業の生産性の向上、さらには、こうしたものを図りながら地球温暖化にもつながる取組となってございます。
我々にとっては、みどりの食料システム戦略を推進する上でも有効な取組であると考えているところでございます。
○堤委員
それでは、次に、山梨県では、先ほどの無煙炭化器を半額で補助しています。山梨県が単独で半額補助しています。これを政府補助とするなどして、全国にこの先進的な山梨方式を広めていただきたい、横展開していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。御所見をお聞かせください。
○安岡政府参考人
お答えいたします。
農林水産省では、みどりの食料システム戦略推進交付金というものを措置しておりまして、各産地に適した、環境負荷低減に資する栽培体系への転換のための取組を支援しているところでございます。
バイオ炭の取組は、まさに環境負荷低減に資する取組の一つでございますので、本交付金において、バイオ炭を生産するための御指摘のあった炭化器の導入を含めて、バイオ炭の施用の実証について支援しているところでございます。
現在の実績なんですが、今年度は、既に本事業で、十県でバイオ炭を使った検証に取り組む計画がございます。そのうち、山梨県を含めた五県で実際に支援を活用して炭化器を導入する計画となっているところでございます。
今後もこうした支援策を使って取組の横展開を進めていきたい、このように考えております。
○堤委員
私の地元であります朝倉市、筑前町、東峰村では果樹栽培も大変盛んですので、是非九州にも広まっていただきたいと思っております。
さて、政府は、G7日本開催を契機とした世界、アジアのSDGs達成への貢献を掲げておられます。途上国を含む世界各国、とりわけ近隣のアジア諸国における脱炭素を支援することは、私も大変重要な日本の役割だと考えます。
山梨方式は、途上国支援に最適ではないかと思っております。
なぜなら、まず、必要な器具は炭化器のみで、高価な機械も電気などの動力も必要としません。頑丈で、安価で、誰にでも使いこなせる、メンテナンスも必要ない、ローテクノロジーであるだけに、途上国の方々が導入しやすい技術だと思います。
さらに、今まで政府からもお答えがありましたように、土が豊かになることで作物の収量が増加したり、吸水力や保水力が高まることで干ばつや洪水の発生を防ぐという効果もあり、途上国の貧困問題の解決にも資するのではないでしょうか。
そこで、次に、今後、農業分野における海外協力としてこの山梨方式を広めていってはどうかと考えますが、農水省の御見解をお聞かせください。
○岩間政府参考人
お答え申し上げます。
農林水産省におきましては、みどりの食料システム戦略に基づき、環境負荷軽減に資する技術、生産体系の開発、それから社会実装に取り組んでおります。ここで得られました我が国の経験、科学的知見を活用して、途上国の持続可能な食料システムへの移行に貢献するということでございます。
今御指摘がございました気候変動対策につきましては、山梨で行われているような土壌炭素貯留の取組に加えまして、温室効果ガスの排出削減の取組も含めて、途上国の能力向上、これに資するように、アジア・モンスーン諸国を対象としたワークショップ、こういうものを農林水産省として開催しておるということでございます。
農業分野の途上国支援として、今後とも、我が国の知見、技術を活用した取組を進め、気候変動対策を含め、途上国のニーズに応じて、最適な方法での支援を実施してまいりたいと考えております。
○堤委員
太平洋の島嶼国やアジア、アフリカなどの途上国よりも、私ども先進国の方がはるかに温暖化の原因となる炭素を排出しているにもかかわらず、途上国の方が水害や干ばつなど、気候変動による甚大な被害を受けています。先進国の責務として、日本だけでなく途上国のカーボンニュートラルにも貢献していただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
最後に、この山梨方式を国内で、また世界で推進していくためには、環境省と農水省が協力して取り組むことが肝要かと思いますが、今後どのように進めていくのか、意気込み、決意をお聞かせください。
○国定大臣政務官
堤委員御指摘のバイオ炭でございますけれども、先ほど来農林水産省の方からも答弁申し上げておりますとおり、大気中の二酸化炭素を吸収、固定する効果があるとされているところでございまして、環境省といたしましても、温室効果ガスの吸収源対策として評価をしており、国際的なルールに基づき、吸収量として計上しているところでございます。そのため、バイオ炭の活用は、我が国の温室効果ガスの排出削減量にも貢献をしているというふうに捉えているところでございます。
引き続き、農林水産省を始めといたしまして関係省庁と連携をさせていただき、バイオ炭等の吸収源対策にも取り組みながら、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現を目指してまいりたいというふうに考えております。
○堤委員
今後の展開に期待しております。
それでは、質問を終わります。ありがとうございました。
当サイトについて
衆議院議員 堤かなめの公式ホームページです。